一人の女性に伴走するということ ~継続ケア~

女性には産む力があり、
赤ちゃんには生まれてくる力がある。

その力を存分に発揮するには、
女性が心から安心し、リラックスしていることが
欠かせない。

アウェイではなく、いつものホーム(自宅)。
そして、自分のことを理解してくれている人が
そばにいること。

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めでたや助産院の最初の産婦さんが
無事お産を終えたあと、
ふたりでゆっくりとお産の振り返りを
することができました。

彼女はお産の時のことを、
こう表現してくれました。

「お三方(助産師3人)と母と一体になって、
 団結しているという感じだった。」

「お三方は、いたって普通、如常、全然ブレない。
 それがすごく安心した。
 いいんだこれでと思って。
 安心してみてくれている3人がありがたすぎて、
 そこにしか拠り所がなかった。
 私どうにかなっちゃうんじゃないか、
 恐怖と瀬戸際だった。」

お産のさなか、
異次元の世界にまで突入していく時、
そばで「それでいいよ」と見守られること。
信頼感と安心。

だからこそ、
1回1回の妊婦健診が真剣勝負。
妊娠期には様々なものが出てくる。
その人の育ってきた背景、夫婦関係、
子どもとの関係、親との関係、
仕事のこと、自分の癖、課題…。
それらと向き合わざるを得なくなる。
助産師はそのプロセスを見守り、
ひとつひとつを大事にする。
どうしたいか、どうなっていきたいか、
どうしていくか。

妊娠期の日々を共に重ね、
女性(妊婦さん)が助産師を知り、
助産師が女性(妊婦さん)を知る。

そうして、
その人がうなずくちょっとした角度、
ふっとしたしぐさ、
ちょっとした言葉で、
いや、言葉がないこと自体ででも、
助産師はその女性の変化を
感じ取ることができるようになる。

それくらいの深さで、
お産を共にしていきます。

私も総合病院に勤めていましたが、
妊婦健診の時に妊婦さんは
助産師に会う機会はほとんどありません。
陣痛が来て病院へ向かい、
そこで初めてその日の分娩担当助産師に会う。
痛みと不安でいっぱいな中、
初めて会ったその人と関係性を築いていく。
やっと慣れたかと思ったその助産師は、
勤務帯ごとに交替してしまい、
“ああ…行ってしまうのか”と
お産の最中に落胆する。
そしてまた陣痛の最中に、
一から人間関係を築いていく。
合う人、合わない人もいる。
そんな中、自分の本心や、
「それはイヤ!」という気持ちを伝えるのは
簡単なことではないだろう。
医師・助産師としても、
お産で初めて顔を合わせた方に
最大限のケア・医療を提供しようと思っても、
その方の社会的背景、家族関係、
お産への思いなどを、深く知ることは困難。
そのため、指標となるのは、
バイタルサイン(体温・血圧等)、内診、
胎児心拍と陣痛間隔、分娩時間、採血結果など、
どうしても数字になってしまいます。

継続ケアは、妊娠期から時を重ね、
その時(お産)がきて、そして産後まで、
ずっと同じ助産師が担当します。
あなたを知っている助産師が伴走することで
生まれる信頼感、安心感。
そんな継続ケアだからこそできるお産の世界を、
より多くの人に知ってもらいたいです。